引越しやらパーティやら動物園やらと忙しい一週間が終わり、すっかりと落ち着いてしまった。そう、前々からちょくちょく書いてるように、友達がほとんど日本に帰ってしまったんだよね。 別にカナダに行って日本人ばっかりと一緒にいたわけじゃないんだけど、やっぱり言葉が通じる人と一緒にいちゃうもんなんだよね。一応、日本人以外だとサウジアラビアのオサマ 、韓国のホン・ギュウ、メキシコのエディ、スイスのスティーブなんかと一緒にいたんだけど、スティーブ以外は英語はへたくそ。お互いよくわからなくて自国語なまりの英語を駆使してなんとかはなしてたかな(笑)。 あ、名前見ればなんとなくわかると思うけど、みんな男ね。シャイな僕は女の子に声かけられなくて、じゃなくてただ単に相手してくれなかったんだけどね。

相手をしてくれた女の子といえば韓国人のスー・ジー(?)。彼女にはいじめられたなぁ。英語も日本語もほぼわかってるんだよね。で、授業のときなんか助けてくれつついじめてくれるわけ。一度、 授業で「自分の国では何をやってるか?」について話すって時があったんだけど、ぼろぼろ。当時、一応大学3年生だった僕は「学生だ」と自信をもって答えたわけ。 そしたら、スー・ジーが「日本人の学生は遊んでばっかりだから、学生っていったって勉強なんかしてないわよ」ってみんなの前で言うわけさ。たしかに、多くの学生はそうなんだけど、僕は変わりもんで、好きな授業しか取ってなかったもんだから毎日1時限目から楽しく、真面目に授業にでて、夕方から夜まで部活やってっていう充実した毎日を過ごしてたんだよね。だから、こりゃ言い返さないとと思ってびしっと言ってやった!・・・そう、心の中ではびしっと言ってたのだが、英語力はついてきていなかった。で、口から出てきた言葉は「Everyday Holiday !」・・・あー、僕はなんて馬鹿なんでしょう。こうして、日本人学生と僕の馬鹿さ加減を露呈してしまったのさ。真面目に勉強してる学生さんごめんなさい。

まぁ、こんなことはどうでもいいわけで、こうやって一人でいるといろいろ考え出しちゃってね。「僕は何しにカナダにきたんだ?」というような基本的なことまで考え出しちゃったわけ。せっかくカナダにきて、毎日学校行ってるだけか?ってね。で、ちょっと考えたら、正気に戻りました。そう、僕はメジャーの野球を観るために来たんじゃないか!それなのに、僕ときたらまだ3試合くらいしか見ていない。

というわけで、シカゴ行き決定。なんでいきなりシカゴかって?うん、当初からトロントにいる間にアメリカまで野球観に行くつもりでいたんだよね。それを思い出して、近いところをさがしたら、まずデトロイトがすごく近い。でも、カナダ人にデトロイトのことを聞いたら「今は荒廃してるから行かないほうがいいよ。しかも、君は日本人だからやばいかもしれないし」って言われて怖くなってやめました。自動車の都市デトロイトは日本車の影響で荒廃してしまったようだ。あとは、ニューヨークかシカゴが観光を含めて行ってみたいなぁって考えてて、でちょうどその時映画館で「逃亡者」をみたばかりだったからその舞台であるシカゴに決めました。結構単純なもんで・・・。こうして、この後の日々が野球漬けに変わっていくのであった。

5日間のシカゴ野球観戦旅行で頭の中はメジャーリーグのことばかり。で、帰ってきた翌日はSKYDOMEへ野球観戦。8月中にちゃんとチケットを買っておいたので今度はダフ屋の世話にならずにすんなりと入場。ただし、席は5階席。BlueJaysはこの当時は常勝チームでずーっと優勝争いに絡んでたし(最近は低迷してるけどね・・・)、SKYDOMEは世界初の開閉式屋根付球場ということで球場自体にくる人達もいたんだよね。ということなんで、チケットを購入できてたということでかなりラッキー。文句はいえんと応援に励む。

2日後、気づくとまたSKYDOMEの前に立っている。どーも、野球を観ないと禁断症状がおこるようになり、というのはウソだけど、野球を観るということがトロント滞在の一番の目的だったから体が勝手に動いちゃうんだよね。それに、今日の対戦相手は NewYork Yankees。別に Yankees が好きなわけでも何でもないんだけど、相手側の今日の予想先発投手が Jimmy Key って書いてあったんだんよ。彼は僕が大好きな投手で、実は去年までは BlueJays の左腕エース!トロントで一番見たかった選手はまさに彼だったんだよね。でも、フリーエージェントで Yankees に移籍していてそれもかなわぬ夢と・・・って思ってたときの偶然の先発。行くっきゃないでしょ?でも、今日はチケットなし・・・。ということは、ダフ屋と交渉しないといけないじゃないか。で、交渉開始。来たときはまったくといっていいくらい、相手の言ってることが聞き取れなかったし、言いたいことをいえなかった僕もこの2ヶ月でなぜかなんとなく言ってることがわかるようになっていた。相変わらず話すのはたどたどしかったけどね。

いやー、ダフ屋って吹っ掛けてくるね。トロントで一番良い席って当時$19.50。これを日本人だとばかりに$300.00って言ってくるんだよ。で、当時のカナダドルって$1が80円くらだったんで日本人にとってはいいレートだったということもあり、金満ニッポンの旅行者はたいして値切りもせずにポンポンと買っていくんだよ。でも、でも、僕は貧乏滞在者。そんな金額ではまったく手が出ないんで交渉を。けど、これが難しい。$40.00くらいしかだせないというと$19.50ではなく、5階席(それでも$11.00)を勧めてくる。まぁ、ダフ屋としては当然だよね。でも、僕としてはなんとか Key を間近で見たいんで$19.50の席は譲れない。で、あーだこーだと粘っているとダフ屋が「このチケットだったら$80.00で売ってやる」と言ってくる。見るとチケットには$19.50の印刷が!悩んだ。やっぱり$80.00は高い、でも、次の瞬間チケットは僕の手の中に・・・。買っちまったー。まぁ、Key のピッチングを見ないで後で後悔するよりはいいだろと納得させて球場へ。やっぱり、うれしい気分である。

席を探すためにチケットを見る。えーっと、GATEは15で、AISLEは243。んん?243だって?普通、1階席は1××なのになんで?ちょっと不安を感じつつも席を探すと、そこはなんと外野2階席であった・・・。このときに思い出したんだよね。日本では外野席っていうのは一番安い席だけど、向こうでは一概にそうじゃないんだよ。SKYDOMEは内野の2階にVIPルームがあって、一般の席は外野のみ。こういう状態だと、2階の人口密度って他の階に比べるとかなり低いわけよ。ということは、1人あたりのトイレの数とか売店の数が増えるからとってもいい席だっていうことで、チケットの値段は高くなる・・・。メジャーリーグ通を自負していた僕が、こんなことを忘れてしまうなんて・・・。まぁ、Key のピッチングは遠くてあんまり見えなかったけど、幸か不幸かブルペンが外野フェンスの裏側にあったから、試合前にバッチリ間近で見れました。必死にカメラのシャッターを押すも現像してみたらどれもボケボケ。ブルペンは暗かったからシャッタースピードが遅くてね。試合は、Key が打たれて BlueJays の勝利。ちょっぴり複雑な気分だったけど、いよいよ優勝へのマジックは3になり秒読み態勢。あとはその時を待つのみである。

待つのみといって待っていられるほど人間穏やかなものではない。案の定、2日後にはまたSKYDOMEへ直行である。でも、これはしょうがない。なんてったって、今日勝てば地区優勝。家にいられるわけがないんだよね。というわけで、またダフ屋と交渉。前回の教訓を生かし、今回はばっちり1階席をゲット!しかも、ベンチ裏の前から3列目といういい席で優勝がみれるなんて、僕はなんてラッキーなんだろうと思いながらの観戦となる。が、世の中そんなに甘くないようで、残念ながら優勝はおあずけ。BlueJays は遠征へとでてしまったのであった。まぁ、その後 BlueJays は無事に3年連続の地区優勝を決め、League Championship Series へと駒を進める。つまり、僕のSKYDOME通いも続くことになったのである。お、お金が・・・。

BlueJays 地区優勝をただ喜んでいるだけでは何もはじまらない。チケットを入手しないことには試合は観れないからだ。で、「朝からSKYDOMEのチケット売り場で販売する」という情報を入手。それならばとばかりに、チケット購入のために並ぶことを決意!夜から並んでればチケットは買えるだろうと夜10時頃にSKYDOMEへ行くものの、なーぜか誰もいない。あれ?なんで?日本だと結構並ぶじゃない?と思いながらも、誰もいないSKYDOME前に夜通しいるのはちょっとバカバカしかったし、さすがに怖かったんでやめました。

翌朝はチケット購入のために6時起床。7時にSKYDOMEに着くと、5人ほど並んでいる。6人目ならバッチリ買えるねと思い喜んで並んだんだけど、問題が一点あり。さ,寒すぎる・・・。並んでるときの気温わずか3℃。まぁ、もちろんこれは朝の気温であって最高気温はちゃんと10℃にはなっているんだけど、これって東京の真冬の気温じゃないか・・・。やっぱりカナダって寒いのね。なーんて、呑気に考えてらんないんだよね。だって、僕、冬服持ってないんだもん。まさか、こんなに早く寒くなるなんて思ってなかった僕は、トロントに来るときは夏服しか持ってきてなかったんだよね。で、9月初旬にちょっと寒くなってきたんで、日本にいる親に「冬服おくってくれー」って頼んでたんだけど、何故かまだ届かない。しょーがないから、僕はTシャツやらポロシャツやら長袖シャツを重ね着し、友達からパーカーを借り、シカゴに行くときに買った頼りなげな薄手の上着を着ての出陣となっていた。まぁ、これだけ来てればたいていの人なら寒さは凌げるんだろうけど、実は僕究極の寒がりなんです。日本にいるときは誰よりも厚着をし、それでも寒いと友達のコートをぶん取って着てしまうほどだから、これでもかなりきつい。おまけに、SKYDOMEはオンタリオ湖の傍にあるから湖からの風も寒い寒い。

ガタガタ震えながらチケット販売を待つこと約3時間。すでにチケットを買い求める人達の列はかなりの長さになっている。ん?向こうからSKYDOME関係者が歩いてくるではないか!よっしゃー、待った甲斐があったーと涙するも、どこか他の人の様子がおかしい。あれれ?みんな帰っちゃうじゃん?なんで?と思いながら前に並んでた中年オヤジに問いただすと、「今日は売らないんだとよ」の一言・・・。神よ!あなたは何故にこんな試練をあたえるのか?結局、チケット入手は翌日に持ち越しとなってしまった。でも、日本だったらそのままみんな並んでるのに向こうの人って帰っちゃうんだよね。まぁ、僕もこの寒さの中ずっと並んでたら、死んじゃいそうだからちょうどよかったってもんさ。

仕切りなおしの2日目。天気予報では最高気温は7℃、最低気温は1℃らしい・・・。こりゃ、今日チケット売ってくれないと死ぬなと思いながらも SKYDOMEに向かう僕。ただのバカか?いやいや、バカは僕だけじゃなかった。昨日と同じ5人がきちんと並んでるじゃないか!Good Morning の挨拶とともに僕も列に加わり、みんなでガタガタ震えながら販売のタイミングを今か今かと待っている。が、10時すぎにまたもや関係者登場で今日もチケット販売をしないことが判明。 すごすごと家路につくのであった。

3日目も同様にチケット販売はなし。僕の体力もそろそろ限界に近くなってきた4日目。いつものように6番目に並び待つこと3 時間。またまた、オヤジが歩いてくる。おーい、今日も売らないのかよーとみんなでブーイングをしていると「12時から販売開始します」のアナウンス!ついに報われる日が来たのだー。そこからの2時間はもう苦痛でもなんでもなくなって、寒さなんかもすっかり忘れて・・・はいなかったんだけど、とにかく楽しく待てました。途中、観光バスがSKYDOMEに乗り付けてきて、バスの中からうんちゃんが「チケットはここかい?」と 聞いてくる。そうだと言うと、うんちゃんバスから降りてきて列に並んじゃうじゃないか!唖然として見ていると、「今、お客さん観光中だから、待ち時間なんだよ」の回答あり。だからって、普通くるかい?しかも、観光バスで!ちょっと日本じゃ考えられないシーンもあり、かなり楽しませていただきました。肝心のチケットはといえば、ちゃんと12時から発売され、僕は3試合分の自分のチケットと、予備のチケットをたんまり購入してにんまり帰宅。なんで予備のチケットがいるのかって?まぁ、友達が欲しいといえば譲ってあげるつもりだったし、なんといっても良い席はダフ屋が高く買ってくれるから。ちょっと本当にお金なくなってきてたんだよね。このままでは生きていけず路頭に迷うことが目に見えてたもんで、ここはダフ屋に売って少し稼いどこうってね。

はっきり言って、無茶苦茶きつい4日間。本当に寒さで倒れるんじゃないかって思ったけど(ちょっと大袈裟)、無事に買えて良かったー。まぁ、きつかったことは事実なんだけど楽しかった面もあり。毎日列の1番から6番目の僕までは同じ人。で、朝からずっとならんでりゃ、当然のように話をするわけで、しかも野球のチケット買うために並んでる人達の話題なんて野球のことだけ!何年の誰々はすごかっただとか、あのプレーは最高だったとか、何年のチームはBlueJays至上最強だとか etc。日本じゃ BlueJays っていっても知ってる人はほとんどいなかったし、その中の選手の話なんて誰ともできなかったけど、この人達の頭の中には数年前からのデータがバッチリ詰まってるんだよね。で、僕もファンになってからすでに7年目だったから話題ピッタリ。寒さに震えながらも、野球談義に花を咲かせていたのさ。うーん、やっぱり並んで良かった。

10月5日。いよいよ League Championship Series の開幕。ただ、今回は相手球団 Chicago WhiteSox の本拠地からのスタートだったんで自宅にてTV観戦かと思いきや、ちゃーんとSKYDOMEを無料で開放してくれたんでみんなで大型スクリーンを見ての観戦に。やっぱり、家で独り寂しくTV観戦してるよりもみんなで盛り上がるのっていいよね。結果はエースの Juan Guzman が調子悪いなりにうまくまとめてまずは先勝!第2戦も勝って敵地で2連勝とリーグ優勝に向けて幸先のいいスタート。う~ん、優勝目前だね。

そしてトロントでの第3戦。いよいよ、Championship Series の観戦だい。ということで、まずは昼に床屋に行ってすっきりしてナイトゲームに備える。まぁ、試合開始前にいろいろとあって大変だったんだけど、試合が始まっちまえば心は BlueJays のみ。明日の生活のことも考えずに応援に励む。が、なんといきなり5点も取られてしまい、完敗。翌日の第4戦も当然のように観戦に行くが、またもや敗戦。そういえば、僕が観に行った試合って結構負けてるんだよねぇ。ひょっとして、疫病神?なんて考えながら、SKYDOMEを出ると、雪が・・・。昼はみぞれ降ってたもんなぁと思いながらしぶしぶ家路につくのであった(1993年10月8日)。

懲りずに第5戦を観に球場へ。開幕2連勝と幸先のいいスタートをきったのに、ホームに戻ってきて2連敗で2勝2敗のタイに。ここで負けちゃうとなんか嫌な雰囲気になるところだったんだけど、そこはビシッとやってくれました。打線は初回から小刻みに点を重ね、投げては第1戦に続いて Guzman が好投。終盤へばるも 5-3 で快勝。World Series 出場まであと1勝とトロントは盛り上がるのであった。

あっさり書いてしまうと、BlueJays は第6戦で決めた。リーグ優勝を!ただ、シカゴでの試合ということもあるんだけど、まったくといっていいくらい記憶がないんだよねぇ。SKYDOMEまで観に行った記憶もないし、ましてや優勝決まって盛り上がった記憶もない。多分、TV観戦はしてたと思うんだけどねぇ。まぁ、この Championship Series の時期はいろいろあったんでそっちの記憶のほうが残ってるからかなぁ。とはいえ、無事リーグ優勝を決め、昨年(1992年)に続き World Series 進出を決めたのである。僕としても、野球観に行って応援してたチームが World Series に出るなんて本当にラッキーだよね。うーん、人生うまく回ってるよ。

BlueJays の World Series 出場で盛り上がるトロントの街。野球を観るためにカナダに住んでしまった僕にとっては本当にいいタイミングだった。ただ、この Championship Series 中、僕はとっても疲れていた。盛り上がりすぎ?いやいや、そんな楽しいことじゃなかったんです。そう、前からちょこちょこ書いてはいたけど、深刻な財政難に陥っていたんです。もともと、“カナダで働けばいいや”とたいしたお金ももっていかず、更に無謀なことに帰りの航空券も持たず片道キップで入国していたおいら。人生なめてるとしかいいようがありません。

で、とりあえずこの時期の僕はパンとコーヒーを軽く食べて学校に行き、昼飯は外では食べずにいちいち家まで戻ってきて50セントのサッポロ一番を具も入れずにすするという毎日。なぜこんな生活なのかと言えば、原因のひとつには「野球のチケット購入」がある。かなりたくさん買っておいたシリーズのチケット。友達が欲しがったら譲ってあげようと思ってたんだけど、だーれも興味を示さない。まぁ、もともとダフ屋に高く売ればいいやと思ってたから、しょうがないなと思って球状周辺のダフ屋のおやじに声をかけたわけ。

ぼく:「このチケット一番いい席なんだけど買わない?」

ダフ屋:「2枚で40ドルな」

ぼく:「なに?おいおい、これは1枚52ドルのチケットだぜ!冗談だろ?」

ダフ屋:「今なら2枚で40ドル。アイスホッケー始まったから野球のチケットは売れねぇんだよ」

ぼく:「・・・。ま・じ?」

ダフ屋:「試合開始時間が近づいたら2枚で30ドル。どうする、ボーイ?」

ぼく:「じゃぁ、いいよ。結構だ!バイバイ」

なんてこったい。これじゃ、大損じゃねぇか。恐るべしアイスホッケー。恐るべしカナダ人。いくらアイスホッケーが国技だからって野球のほうは Championship Series だぜ?よくわからん国民だ。だから誰も買わんのかと途方に暮れる・・・。

ダフ屋には売らない!とつっぱってみたけど、とにかく僕はとっても追い詰められたわけで、今更買ってくれる友達はいないし、ダフ屋に売ったら大損だしで頭抱える状態となった。が、人間追い詰められると何でもできるっていうやつで次の瞬間僕は自分がダフ屋になることを決心する。これって犯罪・・・、でも生きていくためにはしょうがない。このチケットを売らないと来月以降の家賃払えないし、日本に帰る航空券代もってないしで路頭に迷っちまうもんね。やるしかないっつーことで僕は球場周辺で声を張り上げチケット販売を開始した。

寄ってくる寄ってくる。こりゃ、売れるかな?と思い最初の客と交渉しようと思ったところ、いきなりグイっと腕をつかまれる。おいおい、なんだなんだ?唖然とする僕。とその客は「ここは俺たちのテリトリーだ。でてけ!」とのたまうではないか。そう、客じゃなくてダフ屋だったんですねぇ。なんでも、僕が声を張り上げていたところは彼らのグループのテリトリーっていうことらしく、「ふざけんな、でてけ!」ってことらしい。危ない危ない。と心を入れ替え、場所を変えて販売活動再開。が、今度は他のダフ屋グループのテリトリーに入っていたらしく、いかついオヤジが迫ってくる。すべての空間がいくつかのダフ屋グループによってテリトリーわけされているっていうことで、要するに僕が売れる場所はないっていうことのようだ。それに、よく見てると私服警官がうろついてるんだよね。僕はちょっとここで怯んだ。「さっきのダフ屋に売れば少なくとも40ドルは回収できる。このままじゃ丸損だ」。でも、なぜか僕は自分がダフ屋として売るほうを選んじまったんだよねぇ。

というわけで、僕はダフ屋と私服警官から逃げながらの販売活動を進めることに。で、よくよく見るとダフ屋は日本人観光客をとってもカモっている。どんなチケットでも最初は300ドルで売ろうとしているではないか。かわいそうな日本人はそのまま値切りもせずに買っていくのである。今日を逃せばもう帰らなければいけない観光客は少々高くても買っていく。これは僕が観光客の立場でもそうだろう。まぁ、300ドルは高いからちょっとは値切るけどね。で、僕は日本人向けに「安心の日本語」「低価格(120ドル)」「持ち前の爽やかさ」でチケットを販売することに。悲しいかな日本人、120ドルという定価の倍以上の値段でもとっても喜んで買っていってくれる。今考えるととんでもない詐欺行為だっていうのに、「え?120ドルで譲ってもらえるんですか?これ高かったでしょ?ありがとうございます」なんて逆に感謝されて・・・。外国人はさすがに120ドルじゃ買ってくれませんでしたねぇ。値切られて20ドル程度の上乗せで買ってくれるっていう感じでしょうか?

こんな感じでこのシリーズ中僕は試合開始まではダフ屋としてチケットを売り、試合が始まれば野球観戦というよくわからん生活を。はっきり言って、試合が始まる頃には心身ともに疲れきっていたと言うのが事実。ダフ屋に脅されるのは嫌だから逃げまくっていたし、警官にしょっ引かれて強制送還は絶対に避けたい。でも、チケットを売らないと生きていけないという状況で疲弊してました。ただの犯罪行為なんでここに書くべきではないと思いますが、とりあえず事実は事実として反省しここに書くことに。あの時、高く僕からチケットを買った人たちごめんさい。カナダに住むお金のない青年への寄付だったと思ってください(ちょっと調子いい?)。そう、僕はわざわざワーキングホリデー・ビザをとりながら仕事はダフ屋をやっていたという変わり者なのでした。関係者のみなさん、すみませんでした。お許しを~。

まさかカナダにきてダフ屋をやるなんて全然考えてなかった。だって僕はちゃんとした仕事をすることを許されるワーキングホリデー・ビザを持ってたんだもん。今まで何人もの人がこのビザをとってカナダに行ったと思うけど、ダフ屋を職としてやっていたのは多分僕くらいだろうね。

さて、この時期僕はカナダ人の新たな友達ができました。その名はトム、職業チケットブローカー・・・。そう簡単に言えばダフ屋だな。彼は僕がチケットを売ろうとして「2枚で40ドルな」といったダフ屋ですね。これが僕と彼との出会い。で、僕はこんな価格では売れんとつっぱって自分でチケットを売ったわけだけど、彼はいつ戻ってきて自分に売るかとずっと見ていたようです(数日間)。でも、彼の予想に反して僕はチケットを売りきった。その時彼は拍手をしながら僕のところに寄ってきて「Hey, Tough boy ! ○▲※□★(聞きとれんかった)」と祝福の言葉をかけてくれたんだよね。彼が言うことには絶対に素人が売れるとは思わなかったらしい。でも、ちょろちょろと売ってる僕を見て、なんてタフな奴なんだろうって思ったんだとさ。こうして、カナダでの僕の呼び名が「Tough boy」ってことになったわけ。まぁ、Tough guy じゃないところが幼く見える日本人ってところかな。

で、新しい友達ができたといっても、別に一緒にどこに行くというような付き合いをしてたわけじゃなくて、僕らが出会うのは球場の周りであったり、アイスホッケーのスタディアム周辺であったりというダフ屋が生息するところ。そう、深刻な資金難から脱出した僕はアイスホッケーのシーズンは当然のように試合を観に行ったわけ。僕はその時に彼からチケットを安く譲ってもらってたわけさ。チケット余らせちゃったら損だから安くても僕みたいなのに売っちゃうのがいいってことでしょう。僕としてはいつも安く試合が見れて超ラッキー。とっても良い席でも1枚しかないとなかなか売れないから、そういう時は僕がやすーく買ってあげてたわけ。というわけで、友達というよりもお互いに利害の一致した関係だーね。まぁ、まさかダフ屋と仲良くなるとは思わなかったけど・・・。

というわけで、カナダで変な仕事はするわ、変な人と仲良くなるわとなかなかできない経験をさせていただきました。ちょっとやばいけどね。おっと、一応言っときますけど、トムは正確にはダフ屋ではなくチケットブローカーとのこと。彼が言うことには、僕みたいなのがダフ屋であって、彼のようにチケット販売を職業として認められているのはチケットブローカーなんだとさ。まぁ、一般人からみれば両方ダフ屋だけど・・・。

自分で言うのもなんですが、僕はそれなりに人を思いやる心を持っている結構まともな人間でじゃないかと思います(ダフ屋やるような奴が何言ってんだ?って感じでしょうか。この件はなかったことに…)。それは、幼少の頃から両親や祖父母などまわりにいてくれた人たちから、教えてもらったり、注意してもらったり、時には怒られたりして身についた僕の財産だと思ってます(感謝)。

トロントに住んで感じたことは、みんなとても親切だということ。電車やバスに乗るときに「お先にとうぞ」なんて言葉を何度かけられたことか。日本では我先にと横入りして乗り込んでくるような光景が多かったんですけどねぇ。また、ビルの入り口のドアも、開けたら次に入る人が来るまでドアを持って開けててくれるの。すぐ後ろにいる時はもちろん、僕がまだドアまで5~6mくらいありそうなところを歩いてても、にっこり笑ってドアを開けて待っててくれるんだよね。友達でもなんでもない、たまたまそこを歩いている知らない人にだよ。日本では自分が通ったらもう知らないっていう状態だよね。エレベーターに乗っても違うんだよね。階数やドアの開閉ボタン前に立っている人はほぼ確実に、人が乗り降りしている時には「open」ボタンを押しててくれるし、乗ったら「何階ですか?」って聞いてくれる。これまた、日本ではボタンの前にただボーっと突っ立ってるだけの人が多いし、こっちから「○階お願いしまーす」ってでかい声出さないと行きたい階にいけやしない。いや、逆に後ろのほうから無言で手を伸ばしてきて、ボタン押す人が多いかな。これはこれでかなり変だよね。

日本の悪口ばかりになってしまった。僕は日本人で、日本が大好きだけど、こういうところって直したほうが良いよね。なんかすごく思いやりがなく、自分のことしか考えてないように思えてならないな。サッカーのワールド・カップなんかでは、「日本のサポーターのマナーはどこの国のサポーターよりも良い」っていう報道が結構あって、僕もうれしく思うんだけど、だったら普段の身近な生活の中でもちょっと実行してみようよ。ちなみに、僕はちゃんとやってますよ。もちろん、至らないところもあるとは思うけど、努力してます。エレベーターではちゃんと「開」を押してあげてますし、ボタンの前に立ってるのに何もしない人には遠慮なく開けておいてくれるように言います。まぁ、これで喧嘩になったことがあるんですが、僕は間違ったことはしてないと信じてるんでこれからも続けますよ。皆さんもちょっと考えてみてください。